【鷹と鷲の練習画】
退蔵院方丈襖絵72面の制作に向けて、
2017年の2月からは、原寸大の大下絵づくりに挑んでいる。
プロジェクトが始まった2011年、言いわたされた画題は「五輪」であった。
「 ” 五輪 ー 地・水・火・風・空 ” その5つの部屋の襖絵を描いてほしい。そして方丈(本堂)のすべての襖絵を眺めると、全宇宙を感じるようにー。」と副住職から告げられた。
壮大なテーマだ。心が奮い立ち、みなぎる。
それからずっと、抱いてきた。
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さて、現在。
一部屋ずつ大下絵に挑みながら、苦戦は勿論、けれどその末にヒラリと世界を覗かせ進めている。
そんな中、あるモチーフにおいてフツフツと煮えそうになっていた。
何回やってもうまくいかない。月日はすぎていく。
悔しさと泣き面と暗中模索にパチンと弾けそうになる。
こういう時は緑を見に行く。
花は優しい、そして強い。緑の空気はいつだって心地いいな・・。
アトリエに戻った。
ふむ。今は一旦このモチーフから離れて、別のお部屋に登場する子たちを練習しよう。
近づきたい子たちは沢山おるのだ!
という訳で切り替えて、「鷲と鷹の練習画」を描いた。
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鷹や鷲たち。
5年前に雀の練習画を描いたのが懐かしい。(https://ysdaki.exblog.jp/18780548/)
同じ鳥類と言っても、姿かたちも違えば表したいことも全く違う。
何をもってこの子たちを選び、生み出すのか。その精神が表現の源となっていく。
広げた真っ白な紙。
木炭で下描きしては、早く生かしてあげたい!って思う。
待っててね、すぐに立ち上がらせてあげる。
生きろ、生きろ、勇ましくあれ。
自分の心か鷹の心か。いや、共になるがいい。
最初は鷹を描いていたけど、いつの間にか 「描きたい!」 が膨れ上がってデカい鷲も生まれた。
それもまたよし!笑
襖絵に浮かび上がる子たちは、この子たちの子孫とも言えるなぁ。
きっと今より凛とした姿で。広い世界へ在れ、と呟く。
さぁ、あと少し。描き上げたらもう一度大下絵へ向かおう。
次へ次へと、描いたものが背中をおしてくれるんだ。
2018年秋 村林由貴