【2018年 春】
絵師としてお寺の門をくぐってから、8度目の春を迎えました。
今年の桜は開花が早く、今ではあちらこちらの木々に柔らかな新芽が光を受けとっています。
さくらー。
春の桜は毎年の景色や心もちを思い出し、そっと記憶をたどる存在に。初めて退蔵院のしだれ桜を眺めた時の、美しさと衝撃と漲る決心とが、風とともに何度も流れてくるようだ。
*
ちょきちょき。ビーっビーっ。
ハサミで切ったり、テープをのばしたり。
アトリエでは黙々と紙をつなぎ、襖4面分と同じ原寸大の大紙をつくる。
この作業をしていると、大学院時代の工程と重なってふと心がほころんでくる。
エプロンや靴下の裏についた墨のあと。
休憩の時、下駄でカランコロンとする少しの散歩。
絵を描くということと共にあるのが嬉しい。
そんな実感が、静かにふつふつと湧いてくる。
*
さて、昨年の春から退蔵院方丈襖絵の構想を具現化すべく、上に述べたような原寸大の大下絵を
描いていっております。
小下絵だけでは、実際に使う筆も違えば表現もかわり、身体的な動きを伴うため完成図が想像しきれない。私自身、とってもとっても未知の景色だ。
だからひとつひとつ、原寸大で描いて感触を掴みながら調整してゆく。
その過程には没頭して描き続ける時もあれば、打ち出してみたものの、これは違う!!と真っ白にしきり直すこともあり。
副住職やプロデューサーの椿昇先生にご意見をいただき、自分だけでは気づなかったところにハッとしたり。
ブラッシュアップ ブラッシュアップ!!
全ては生きた絵を存在させるために!!
心も身体も鍛えねばならんと強く思う日々です。
引き続き、まずは大下絵に挑みながら、今を大切に歩んでゆきたいと思います。
*
(画像については今回、私のカエルくんメモから載せました。
彼らはふとした日記の様に、私の話し相手の様に登場します。)
===========
2018年 春
絵師・村林由貴