初年度1年の修行期間を経て、襖絵プロジェクトもいよいよ本格化してきました!
アトリエとして使わせていただいている妙心寺山内壽聖院さんの
書院の襖を描いてくれ、というご依頼をいただきましたので、
まずはそちらから始めさせてもらっています。
まさにこのお部屋の襖です。
ここは石田三成の菩提寺で、書院ではお茶会も催されるので、
雰囲気にあった絵を描かせてもらいます。
自分の部屋の襖といった「練習」ではなく、
これからはすべて後世に残っていく「本番」の作業。
1年間の修行の成果を出して傑作を残してほしいですね!
そして、昨日は本格的に襖を書き始めてから初めて、
メディアの方の取材をいただきました。
この襖絵の話を聞きつけて、
なんとはるばるロシアからお越しいただきました。
作品はもちろん、このプロジェクトそのもののコンセプトに
大変感銘を受けてくださり、励ましと期待の言葉をいただきました。
そして、この記事はロシアのアエロフロート航空の機内誌に
掲載していただける予定で、そのほかにもロシアの美術雑誌や
ラグジュアリー層を対象にした専門誌にも掲載いただけるとのこと。
このコンセプトは絶対世界に通用する!!、と自分自身も確信していたので、
今後も傑作を残すと同時に、より多くの人にプロジェクトを知っていただいて、
京都や日本を盛り上げていきたいと思います。
なお、退蔵院の襖については、ちょうどこの寒さが一番厳しいこの時期に
越前和紙職人、五十嵐さんに特注の和紙を漉いてもらっています。
5月ころには襖としてできあがるので、それから64面の大作に着手します。
そして、3月か4月頃から、だいたい月に一度のペースで
村林画伯の案内で退蔵院とアトリエである壽聖院のツアーと
お茶とお菓子を囲みながらアトリエでお話いただける機会を設けます。
また、システムができたらこちらにも御案内させていただきますので、
みなさまも是非、楽しみにしていてください!!
龍の練習画を特別公開します
新年あけましておめでとうございます。
本年も退蔵院をどうぞよろしくお願いいたします。
昨年は大きな災害もあり、私達にとっても国にとっても
大きな転機になった一年でした。
今年はみなさまにとっても、日本にとっても、世界にとっても
よい年になることをお祈りいたします。
さて、昨年春からはじまりました「退蔵院方丈襖絵プロジェクト」。
順調にお寺での生活や勉強が進んでおりますが、
今年の干支、龍にあわせて村林が自室の襖に龍を描きました。
龍と鳳凰のコラボです。
「引くこと」はあとでできるので、
今は画面いっぱいに描くことに注力しています。
本人曰く、250%のボリュームだそうです(笑)
まだ練習段階ですが、かなり画風が変わってきましたし、
堂々たるものです。
お正月だけ期間限定で本堂に展示しますので、
初詣がてら、襖絵を見に是非いらしてください!!
展示期間は無事に終了いたしました。
ご覧いただいた皆様、誠にありがとうございました。
福井県越前和紙、職人さんの元へ
一昨日は福井県の越前市今立まで行ってきました。
その理由は、襖絵プロジェクトの襖の紙を漉いてくださる
越前和紙の職人さんにお会いするためです。
このプロジェクトは現在の日本の最高品質のものを使って、
長く残るものを作るのが目的です。
また、紙や墨や筆などの伝統技術を後世に伝えることも意図しています。
ですから、紙は現在の日本で有数の技術者である
五十嵐さんにお願いすることにしました。
私もこちらに伺うまで知らなかったのですが、
和紙ってのはほんとにいろんな種類があるようで、
原料も漉き方もさまざまです。
今回は、特別に国産の三椏を100%使い、
襖用に通常の弐号鳥の子紙の倍に近い厚みで漉いてもらうことにしました。
実は、日本の和紙ってのは古代からとても重宝されていて、
1600年代初頭にはあのオランダのレンブラントが
わざわざ日本から取り寄せた和紙で版画を残しています。
そして、あのピカソも越前和紙を買い求めて作品を残しています。
今回はレンブラントやピカソも重宝した日本の和紙を、
同じように日本古来よりの紙漉きの技術を駆使し
最高の品質の和紙で制作いたします。
この日は実際に墨を持参して、
いろんな種類の紙に試し描きをしてきました。
本人は何を描こうか迷っていたので、
「福井県やから、カニを書いてみい!」
と言ったところ、ほんとに見事なカニを描いてくれました。
描き方もだいぶ変わってきておりまして、
ものの10分くらいで3枚描いていたので、
ほんとにちょっとゾクゾクするような絵師になってきました。
だいぶ楽しみですよ!
冬場に五十嵐さんに最高の紙を漉いてもらい、
墨や筆もそろえ、いよいよデッサンにかかってもらいます。
みなさんも是非期待していてください!
2011年8月5日(金)株式会社墨運堂
2011 年8/5 ㈮、再度墨の選定のため、株式会社墨運堂へ出向きました。今回は百選墨の中で少なくとも製造から20 年以上は経過している50 番台以前の百選墨を中心に試墨をしてもらいました。50 番台以前を使用してもらった経緯としては、墨は製造からおおよそ20 年経過したものを『古墨』として呼ばれ、20 年経た墨は内に含まれる膠の加水分解が適度に進み、色味が安定し、濃墨、淡墨共に幅広く使用できる状態であるためです。
前回お借りした墨を使用しての感想を踏まえ、どのような墨が良いか話しあう絵師村林由貴、松井孝成専務。
百選墨の色見本を並べ、使用する墨を検討する絵師村林由貴。
本番の鳥の子弐号紙に近い練習用の新鳥の子紙に色試しをする、絵師村林由貴。
今回作成した色見本。第一回、二回と様々な墨を試墨した結果、使用する墨はNo.15 天心、No.39 喜上眉梢、No.40三網五常、No.44 吉報春光を使用することに決定しました。
試墨
No.5 説夢 純植物性生松松煙墨( 昭和46,48 年造)…体質的には炭素粒子を細かくし、柔らかい感じの中に一寸硬さを取り入れ、澄の中に濁りを増して調和させ墨色の強さとなし、特に艶っぽさを加味してこの墨独特の個性を作る。
原料は純植物性松煙の最高品を使用し色彩的には赤紫系の複雑な美しい艶っぽい墨色です。此の松煙はすでに製造は中止されていますから、多分まぼろしの墨色になると思います。
No.15 天心 淡墨向の墨 鉱物性油煙( 昭和49 年製造)…体質的には炭素粒子を最大限に分散させ、柔らかい感じを作り、芯を美しく地味に、滲みを明るく派手に落ち着いた美しさを目的に造りました。一寸弱々しいという感じもしなくもないですが、年を経て古くなるにつれて、洗練された美しい墨色になると思います。淡墨向の墨で体質的にそれ以上上品な澄んで美しい地味な暢の良い墨は、蒼堂墨・天心・霊華以外色彩的には今後2~3 種造る一連の墨以外にありません。淡墨の場合、赤茶系の中で粒子の最も細かい炭素で、白光を帯び、赤みのある上品な墨色、濃墨の白光を帯びた上品な赤み掛かった黒ですが、それなりに量感を持たせてあります。
No.16 霊華 淡墨向の墨 純植物性油煙墨( 菜種油) 昭和49年製造…体質的には炭素粒子を最大限に分散させ、柔らかい感じを作り、芯を美しく地味に、滲みを明るく派手に落ち着いた美しさを目的に造りました。一寸弱々しいという感じもしなくもないですが、年を経て古くなるにつれて、洗練された美しい墨色になると思います。淡墨向の墨で体質的にそれ以上上品な澄んで美しい地味な暢の良い墨は、蒼堂墨・天心・霊華以外色彩的には今後2~3 種造る一連の墨以外にありません。色彩的に淡墨の場合赤茶紫系で、粒子の細かい炭素で、白光を帯びた黒に薄茶色掛かった上品な墨色、濃墨の場合白光を帯びた上品な稍々赤茶紫系の墨色で量感を持たせてあります。主として淡墨用の墨ですが、古くなるにつれて濃淡両用にご使用できます。
No.26 石渠捜玄 純植物性油煙墨 棉実油( 昭和52造)…体質的には炭素粒子をよく分散させ、柔らかさの中に地味さを残し、透明度のある澄んだそして、落ち着いた感じにしてあります。その上で、赤みを加え墨色の温かみとなし、白光を帯びさせて墨色の品位にしてあります。色彩的には赤茶紫系の複雑な墨色です。濃、中、淡墨どの濃度でも使用して戴けます。
No:28 太陽精 純植物性油煙墨 菜種油( 昭和53 年造)…体質的には炭素粒子をより最高度に細かく分散を良くし、芯を地味ながらもやや美しく滲みを明るく、澄と濁りを美しく調和させ、より透明度を持たせてあります。尚、赤みを加えて墨色の温かみとし、白光を帯びさせて品位としてあります。全体として透明度があり、澄んで艶っぽく、明るく造ってあります。年月を経過するにつれ、この体質の特長が出てくることと思います。色彩的には赤茶紫系の複雑な墨色です。濃、中、淡墨、どの濃度でも使用して戴けますが、特にこの墨の特長は淡墨の方が美しい。
No.29 臨地草聖 淡墨向の墨 純植物性松煙墨( 昭和53 年造)…体質的には炭素粒子を最大限に分散させ、全体的に柔らかい感じに、そして芯を美しく地味に、滲みを明るく派手に、透明度のある落ち着いた美しさを目標に造ってあります。尚その上に白光を帯びさて品位とし、赤みを加えて温かみとしてあります。年月が経過する程この墨と特長が出てくることと思います。色彩的には地味な複雑な青墨。淡墨向の墨で特長は、淡墨にする程地味で、白光の帯びた赤みのある温かい上品な青墨です。蒼堂墨と同系で、多彩的で地味な、体質的に派手で上品な青墨です。
No.34 清響 純植物性油煙墨 ヤシ油 ( 昭和56 年造)…体質的には炭素粒子を最高度に細かく分散を良くし、芯を地味ながらや、美しく滲みを明るく、澄と濁りを美しく調和させ、全体的に透明度を持たせてあります。尚、白光を帯びさせて墨色の品位とし、赤みを加えて温かみとしてあります。
年月を経過する程、この墨の特長が出てくることと思います。色彩的には赤茶系の複雑な黒。色々とある植物性油煙墨の中でも特に赤渋茶系の色彩に富んでいます。濃、中、淡墨どの濃度でも使用できますが、特に濃、淡墨に特徴が出て美しい。
No.39 喜上眉梢 純植物性油煙墨 ヒマシ油( 昭和55 年造)…体質的には炭素粒子を最大限に分散させ、美しい感じの中にキリッとした力強さを持たせ、全体的に澄んだ墨色で、澄みと濁りを調和させてあります。
立体感は芯と滲みの分離で出してあります。
尚、白光を帯びさせ、赤みを加えて墨色の品位、温かみを出してあります。
年月が経過し、墨が枯れるに従い変化してゆくこと思います。特に濃墨、超淡墨の両極端に於いて顕著な特色を発揮するよう考えてあります。
No.40 三網五常 純植物性松煙墨 ( 昭和56 年造)…体質的には炭素粒子を最大限に分散させ、芯は地味に、
力強さを持たせ、滲みは明るく派手に、全体的に透明度のある落ちついた美しさを目標に造ってあります。
尚、その上に白光を帯びさせ、赤みを加えて、墨色の品位と温かみを出してあります。年月が経過するに従い、この墨の特長が出てくることと思います。
色彩的には、明るい濁りのある地味な、白光を帯びた、赤みのあるやや強い感じの青墨。
(編:青木芳昭 著:岩泉慧)
2011年7月29日(金)株式会社 中里
7/29(金)、京筆を製造している㈱中里へ筆・刷毛の選定協力依頼をするため出向きました。
株式会社 中里
代表取締役 会長 中里 勝
代表取締役 社長 中里 文彦
京都・中里は京都市の中心にある筆・刷毛のメーカーです。青木芳昭教授は会長、社長と二代にわたり筆、刷毛の開発と教育現場での教育普及に尽力してきました。今、日本で表現者の神経質な注文に応えられる筆屋さんとして中里があります。伝統的な筆から平成の筆まで時代の筆を提供できる筆屋として、今回の退蔵院プロジェクトに(株)中里に協力と支援をお願いしました。
どのような筆が良いか村林さんの作品画像を見ながら話しあう絵師村林由貴、中里勝会長、中里文彦社長、青木芳昭教授。
実際に顔彩を使用して試し書きを進め、表現に適した筆を探っていきます。
線描筆を試し書きする。線描筆は線を長く引けるように、根元をずんぐりとさせることにより絵具の含みを良くさせ、穂先が細くとも途切れることなく長い線を引くことが可能のな筆です。
青木芳昭教授より連筆の説明を受ける、絵師村林由貴さん。
連筆は三本以上の筆が連なる筆の一種で含みがよく、柔らかな暈しが出来る筆です。かの、故・東山魁夷氏がよく使用したことで周知された筆です。
一通り筆を試したところでどの筆がイメージに合うか絵師裏林由貴と詰める青木芳昭教授。
今回、㈱中里さんからお借りした筆、刷毛
左から狼毛面相( 中)、極品削用( 大) 線描筆( 大)、YR77-1( リス尾毛)、特製白狸面相( 中)、羊毛連筆( 小、三蓮)( 中、三連)( 中、五連) 薄口刷毛( 特製金泥刷毛)( 30号)
(編:青木芳昭 著:岩泉慧)