2011年7月15日(金)退蔵院
7/15(金)退蔵院にて、紙及び舞良戸の色の選定を行いました。今回、木材の塗料の色見本として舞良戸に使用する秋田杉と台湾檜にオスモカラーのローズウッドとチークを塗装したものを用意し、紙は越前の本鳥の子紙と名塩の泥間似合紙を用意しました。
舞良戸の色選定
舞良戸…舞良戸とは、框に板をはめ込み、その表または表裏に舞良子(まいらこ)と呼ばれる細い桟を一定間隔で取り付けた、和風の板戸のことを言います。舞良戸は、引き違い戸や開き戸ともに用いられ、和風建築の廊下の仕切り、縁側、便所の戸などに用いられることが多くみられます。舞良戸には、桟の取り付け方によって、吹寄せ舞良戸、縦舞良戸、横舞良戸などがあります。今回の舞良戸の材質は現在退蔵院に収まっている舞良戸に使われている杉と檜を使用します。
オスモカラー…高度な技術で精製された高品質の油( ひまわり、大豆、アザミ) が使われており、優れた撥水性があり、水やコーヒーをこぼしてもシミになりません。また、浸透性に優れているため木が呼吸でき、塗装のメクレ・ハガレがおこりません。独自の精製技術で不純物を取り除いた植物油は屋外においても優れた耐久性があり、外装用のオスモカラーは国土交通省が定める屋外塗装の性能に適合しています。( オスモカラー公式サイトより抜粋)
ローズウッド
チーク
舞良戸の桟に使われる木材の色見本。木材は秋田杉で25~30 年乾燥させたものです。
秋田杉は年輪が揃っていて木目が細かく、 節もなく、収縮が少ないため狂いが生じにくいのが特徴です。
ローズウッド
チーク
框の色見本。木材は台湾檜。ヒノキチオールが多く含まれており抗菌・防カビ・防虫などの作用があります。ヒノキチオールとは1930年代、台湾檜の精油から発見された成分で檜が長年の風雨や害虫より自身を守る自己防衛手段として生成させる成分で、抗菌・防カビ・防虫などの作用を持っています。こちらも秋田杉同様25~30 年乾燥させたものです。
表具師物部泰典氏が用意した舞良戸の色見本を見る絵師村林由貴と松山大耕副住職。
実際に現在収まっている舞良戸の色と比較し、色はローズウッドを使用することに決めました。
紙の選定
紙 墨、胡粉との相性は泥間似合、本鳥の子どちらも良いが金箔との相性及び襖サイズの大判は鳥の子でないと取れない為本紙は鳥の子紙に決定しました。
貮號紙の選定理由は特号や壱号紙は雁皮を主原料としており、雁皮は栽培が出来ず大量生産が困難であるため、同じジンチョウゲ科で栽培可能な三椏を原料とする貮號紙としました。光沢は雁皮と比べたら見劣りはしますが、それでも十分な光沢を持っており、日本の紙幣にも使われています。
本鳥の子紙…越前( 現在の福井県) で漉かれており、なめらかな質感や紙の色が鶏卵に似ていることから鳥の子と呼ばれています。
紙質は厚く,緻密( ちみつ) で,光沢があり保存性も高い紙です。鳥の子は時間が経つと独特な風合いを持ち、新しいものより上品な肌合いになるとされています。本鳥の子の「本」とは手漉きで漉かれた鳥の子紙を指し、機械漉きのものは新鳥の子と呼ばれます。
原材料で等級が決まっており、上質のものから、特号紙(雁皮)・1号紙(雁皮+三椏)・2号紙(三椏)・3号紙(三椏+パルプ)・4号紙(マニラ麻+パルプ)となっています。
泥間似合紙…雁皮とベントナイト( 凝灰石) を一緒に漉き込んだ紙。しっとりとした光沢を持ちベントナイトを一緒に漉き込んであることにより弱アルカリ性であり、乾湿や虫害、熱にも強く保存性に富んだ紙です。
越前の本鳥の子弐號紙
名塩の泥間似合紙
紙について話しあう絵師村林由貴、椿昇教授、松山大耕副住職、表具師物部泰典氏。
紙の説明をする青木芳昭教授。
アトリエ見学
最後に今回の襖絵プロジェクトの制作場所として使用する、石田三成の一族の菩提寺である寿聖院を見学しました。
大広場を下見
狩野元信が作庭した枯山水庭園
墨をする際の水として中にある井戸水を使用することを決めました。
(編:青木芳昭 著:岩泉慧)
本日
■7月20日(水)
関西テレビ「FNN スーパーニュース アンカー」
18:15〜18:35 (のうち数分間)
にて、退蔵院方丈襖絵プロジェクトの特集を放送いただくこととなりました!!
ご都合宜しければ是非、ご覧いただけますと幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
2011年6月8日(水)奈良墨運堂(編・著 青木芳昭、岩泉慧)
退蔵院障壁画制作に使用する墨の選定のため、奈良西ノ京にある株式会社墨運堂に行く。
今回の参加メンバーは絵師の村林由貴、プロデューサー椿昇教授、アドバイザーは株式会社墨運堂会長 松井重憲氏、社長 松井茂浩氏、専務 松井孝成氏、笹川文林堂専務 笹川雅義氏、青木芳昭教授、京都造形芸術大学大学院生 岩泉慧、以上7 名が参加。
今回の退蔵院の障壁画プロジェクトのテーマは京都を中心とする近畿の文化の粋を集める、原材料も国産のものを使用し、スタッフもできるだけ近畿の人々で構成し計画を進めた。
百選墨の色見本帳を見ながら、イメージに合う墨について話し合う、 椿教授、絵師村林、松井専務。
墨運堂には永楽庵という試墨が出来る施設があり、ここには百選墨を始めとする墨運堂の墨、約150種が常備されている。
百選墨は先代の会長、松井茂雄氏が長年に渡る墨研究の成果を世に問うべく昭和四十六年に一部発表していた墨を昭和四十七年より製造を始める。
百選墨はそれまでの試作品の中から百種選び出し、一墨質、一型柄(一銘柄)を理念として造られた墨で、日本の墨の最高峰と言われています。
今回、墨運堂を選んだ理由としてはアドバイザーの青木芳昭氏があらゆる墨を試した中で、国産の墨で最も優れた能力を持つのは百選墨であるとのことから墨運堂が選ばれた。
硯と墨の相性があるので、硯も色々な種類を試す。 歙州硯、端渓硯、羅紋硯
硯に関しては日本の硯では墨の能力を最大限に活かせるものが無く、中国の古硯を用意した。
そして、文房四宝(墨、硯、紙、筆)のアドバイザーとして笹川文林堂の笹川雅義氏にお願いした。
また、今回の試墨会は紙の選定も兼ねており、紙も兵庫県名塩の泥間似合紙や中国の画仙紙など数種類を用意し、墨との相性も試験してもらった。
現在、物部さんにより和紙の選定、及びサンプルの発注を行っておりサンプル到着後、青木研究室にて青木と岩泉でドーサ引きを行い、絵師、村林が修行から帰って来る7/9 迄にサンプルの紙を渡せるよう準備中である。
松井会長より譲り受けた歙州硯の板硯で、端渓硯の様に滑らかな肌の石質。
歙州硯は基本、鮫肌の様な石質でこのような石質の歙州硯はめったに現れない。
多くの硯の中からこの歙州硯を選択した。
この歙州硯の選択理由として、松煙墨、油煙墨、両方を滑らかに摩り下ろすことが出来、墨色の発色がとても良かった為、この硯を選定した。
左)イメージに合う墨をいくつか選んだところで実際に試墨してもらう。
右)色々な紙に試墨する。泥間似合紙(生紙、ドーサ引き両方共裏打ち済み)中国の画仙紙4種類(笹川文林堂提供3種類、墨運堂提供1種類)
PV(プロモーションビデオ)が完成
プロジェクトの概要を紹介したPV(プロモーションビデオ)が完成しました。
高画質版はトップページよりご覧ください。
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絵師も決定しましたので、これから完成へ向けて約2年の間、修行の日々が始まります。
窓からはこんなに近く鐘が見えます。環境は抜群。
早速、使い古した襖には習作が。
椿氏の指導にも熱が入ります。
副住職の松山さんも期待通り?で少し和みモード。まだまだこれからです。
期待以上に応えていかねば~。